子を放つ百万本の土筆（つくし）野へ　　工藤博司

　春のさきがけと言えば「ふきのとう」と並んで「土筆(つくし)」。

　日当たりのいい平地ならばどんな痩地でも元気良く頭を出す。しかも同じ場所に群をなしてにぎやかこの上ない。野山に遊ぶときも、なるべく踏まないように気を使っているのだが、避けて足を運ぶことがむづかしいほどだ。子どもたちがまだ幼かった頃は、見る限り土筆で埋めつくされた広い野原に良く遊びに来たものだ。子どもにとってもその解放感はうれしいらしく、時間の経つのを忘れて過ごしたものだ。親にとってもこの上なく安全で安心な場所。今の子どもたちはどうしているのだろう。とりわけ原発禍で避難を余儀なくされている子どもたちにこそ、この爽快な思いを味わわせてやりたいものだ。


　（画・加藤貞雄）