旧憲法あらば獄舎に油蝉　　工藤博司

　今年は蝉の声が盛んである。広くもない庭だが、夏の間は少しでも涼しくありたいと思い、庭木をそのままにしていたのが、繁りに繁り、なにやら林のような感を呈している。

　猛暑続きの中で、安倍政権の軍国主義復活振りは異常だ。「集団自衛権」の行使のために、法制局長官の人事まで牛耳り、その上、「秘密保全法」の新設までもくろんでいる。

　日本敗戦の日、八月十五日の式典での首相宣言からは、遂にアジアの人々への「反省」と「不戦の誓い」の文言が姿を消した。

　私達の世代は、徴兵を強制されないことと、思想や政治信条を理由に投獄されない時代を過ごして来た。これは新憲法の賜ものである。「旧憲法」復活とも言うべき「自民党憲法草案」が陽の目を見れば、またしても投獄の悲劇が生れる可能性がある。現憲法は命そのものである。

　（画・加藤貞雄）