橅（ぶな）芽吹き山肌どこも雪崩（なだ）れそう　　工藤博司

　今年は雪が多く、月山はもちろんのこと、その山系の山並もまだ冬山といった風情です。それでもさすがに木々は季節に敏感で、落葉松は新芽をレースのように張りはじめると共に橅も若葉から青葉に変りつつあります。

　山肌にはまだ沢山の雪が残り、いたるところに裂け目が出来て、いつ雪崩れても不思議でない光景です。

　志津は先頃まで雪解の霞が立ち込め、日によっては、その霞がいっせいに走り出す様も目にすることが出来ました。

　月山ネイチャーセンター周辺は、丈余の雪で、わずかに蕗のとうが金色の芽を出しはじめています。五色沼近くの仙台屋の女主人の話では、積雪は六メートルもあったとかで、この集落の人々の暮しの苦労がしのばれます。

　（画・加藤貞雄）