ふたまわり大きくなれり雪鳥海山（ちょうかい）　　工藤博司

　庄内平野には、北西に鳥海山、東南に月山が聳え立つ。この二つの名山に連なる山々を含め、四季折々の変化は、私達に計り知れない潤いを与えてくれる。

　私の家からは、鳥海山が指呼の間である。

　春は山ふところに入って山菜採りを楽しむ。田植えの頃は広々とした水田に沈む逆さ鳥海山(ちようかい)が美しいし、夏山の雪渓も格別である。

　山頂の紅葉に見とれているうちに、山肌は徐々に褐色を呈し、山容全体が引き締まり、寒気の襲来を前にしていよいよ身を絞るようになる。それが雪を被(かぶ)ると、突然山自体が歩いて来たかのように近づき、山の大きさもひとまわり、ふたまわり大きく感じられる。雪を深々とまとった鳥海山の威厳ある姿が頼もしい。

　（画・加藤貞雄）