大根干す遠目にも海立ち騒ぎ　　工藤博司

　砂地の多い畑は根菜類の栽培に適している。しかも、庄内の砂丘地は地下水にも恵まれているようだ。秋から初冬にかけては大根の収穫期で、葉付きの見事な大根が真白に洗われいっせいに軒や横木に干される。

　庄内空港のすぐそばの浜中部落の大根干しの風景はとりわけ壮観と言うほかない。

　大根干しがはじまる季節は、海もそろそろ荒れる頃で、近海はもちろんのこと、遠目に望まれる海もまた波の立ち騒ぐ日々を重ねる。風物詩とは言え、自然とくらしのきびしさは、日本海沿岸ならではのもので、羽越線沿岸の海辺の集落では、どこでも、「大根干し」と「立ち騒ぐ海」の取合わせを見ることが出来る。それにしても、ここ数年の大雪はもう願い下げにしてもらいたいものである。

　（画・加藤貞雄）