リュックみな月山筍（たけのこ）雪渓踏む　　工藤博司

　月山はいま筍（たけのこ）の季節を迎えている。西川町志津の集落から登ったところにある「月山ネイチャーセンター」周辺は、この時期さすがに残雪はほとんど見られなくなったが、大きな雪渓がまだ山肌を占め、エゾハルゼミが無数の鈴を鳴らすように響いている。月山筍は、雪渓を超えた山ふところに生える。大きなリュックや、布袋を一杯にふくらませた人達が次々と山を下りてくる。中味はもちろん筍である。その足取りには、疲れを見せない充実感がある。「筍ですか」と問うと無言でうなづいてくれる。月山の竹は、「根曲り竹」と呼ばれ、根雪や雪崩に耐えた根元から、瑞々しい筍が顔を出す。さわやかな香りと歯ざわりは絶品で、多くの人がこの季節の到来を楽しみにしている。

　（画・加藤貞雄）