スクールバスわらびの前に停りけり　　工藤博司

　山間部に入れば入るほど、子ども達の声を聞くこともまれになった。これは前にも書いたことだが、私が生まれ育った西川町は、かって十数校の小学校が存在したが、今年の新学期からは統合してたった一校になってしまった。各集落はスクールバスが走ることになる。バスで学校のそばまで運んでくれるのだから便利と言えばそうなのだが、私達が子どもの頃は、長い道のりを自宅まで帰る途中の時間は楽しみでもあった。道端の草花をしらべたり、蝉、とんぼ、蛙と遊んだり、夏には川に飛び込んだり退屈することがなかった。

　下校の道筋は、学びの場であり、友達づきあいを深める場でもあった。自然との絆、人間同士の絆をつくる時・空間がますます無くなっていくのがさびしい。

　（画・加藤貞雄）