焼酎で割ってビールやあじ日干し　　工藤博司

　私が勤めていた鉱山では、「民衆の酒焼酎は、安くて早く酔える」という歌詞が、「民衆の旗赤旗は…」の曲を借りて流行(はや)っていた。鉱山労働者、とりわけ坑内で仕事をする人達は、坑内を出ると「あがり酒」と言って、一日の作業の無事に安堵する酒を必ず口にした。しかし、少々の酒量では酔えない豪の者が多く、ほとんどが焼酎を飲んだ。たまにビールにあづかる機会があっても、ビール程度のアルコール度では酔えないので、半分位は焼酎で割ってあおった。肴は、のソーセージや、かん詰のくじら肉が多く、生魚や魚の干物はぜいたく品であった。鉱山(やま)祭(まつり)で、やはり焼酎割りのビールだったが、つまみに「あじの天日干し」をいただいた味が今も忘れられない。

　（画・加藤貞雄）