農の恵みと俳句

ヒットまたイチロー茄子の畦ラジオ  工藤博司
民報藤島2011年9月25日第813号

 芭蕉が「おくのほそ道」の途上、庄内藩士、長山氏重行宅(現鶴岡市)で歌仙を巻いたときの一句が「めづらしや山を出羽の初茄子(なすび)」であり、この「茄子」は民田茄子と言われてきた。この茄子は、今では生産量も少なく、目にすることがまれになったが、私はぜひ見たいものと思い、ある時民田の茄子畑を訪ねた。残念ながら本物の民田茄子かどうかを確認出来なかったが、忘れられないのは、畑仕事をしていた人が、畦に携帯ラジオを鳴らしており、野球の実況放送中だった。耳を傾けていると、イチローがこの試合三本目のヒットを打ったとかで、興奮したアナウンサーの声が流れて来た。イチローが大リーグに移る前のことであった。

 (画・加藤貞雄)