コトバ

ユートピア　大沼　浩

　トマス・モーアの造語で著作の題名です。モーアはラテン語で書きましたが、ユートピアはラテン語で、ユーは「ない」、トピアは「場所」の意。湯―トピアと洒落たり、雪トピアと合成したりします。また、ユーは優（eu）「よい」とモーアがもじったともいいます。

　ユートピアは理想郷とされていますが、よい場所はない場所ということになります。

　人類の未来には理想郷があるのではなくて、その逆ではないかという見方もあります。アンチユートピアです。例えば米作家ジャック・ロンドンは「緋色の疫病」で、激烈な疫病に襲われて人類はほぼ死滅し、文明は崩壊し、残された少数は原始の世界に戻るという未来の世界を描いています。
　原子力発電所の事故によって避難をよぎなくされた記事の見出しに「被災地未来の縮図」とありました。サイエンスフイクションや未来小説ではなくて、アンチユートピアを現実に見ているのです。