コトバ

イストワル　大沼　浩

　英語のヒストリー・ｈｉｓｔｏｒｙはフランス語ではイストワル・ｈｉｓｔｏｉｒｅです。フランス語ではｈを読まないので、私の名はイロシになります。

　イストワルは仏和辞典で、おおよそ、①歴史、②物語、③（ありそうもない）作り話、④事のなりゆきなどとなっています。

　イストワルという一つのことばには、相容れない意味が入っているように見えます。でも現実のことが、この①②③④のどれかにはっきり区分されるわけではありません。ある一方が①ということを、他方が③であると主張することが日常的に見られます。歴史認識という難しい問題になったり、国際的な緊張が生まれたりします。こうした現実をイストワルは反映しているといえます。

　イストワルの①②③④は、ものの考え方に役立ちます。ある言説を見るとき、それがどれにあたるかを考えたいものです。