続・私説藤沢周平
映画「小川の辺」③
民報藤島2011年7月17日第803号
新蔵は、江戸川の行徳で買物にきていた田鶴を見つけ、後をつけ一里ほどある小川の辺の一軒家、佐久間の隠れ家をつきとめる。しかし、田鶴の前で斬り合いになるのが恐ろしく朔之助に言いそびれて10日もたつ…。買物で留守の間に佐久間を討つが長くかかり死骸の処理が終わらぬ間に田鶴が帰ってきた。「女子供が手出しすべきことではない」などと兄妹のやりとりがあるが、田鶴は白刀で斬りかかり朔之助は後ずさりするが、切り込みで小傷を負う。やむなく反撃し、田鶴の刀は宙に飛び身体は川に落ちていった。
「俺はひと足先に帰る。お前たちは、ゆっくり後のことを相談しろ。国に帰るなり、江戸にとどまるなり、どちらでもよいぞ」。兄として愛おしむ妹への精一杯の言葉である。田鶴は新蔵に肩を抱かれて隠れ家の方に歩いて行く。一転して、川水が軽やかな音をたてて流れている小川の辺は、田鶴と新蔵の新しい旅立ちになった。陽光に輝く小川の流れをいつまでも追うカメラ、最後のシーンは二人の未来が明るく続くことを暗示し、あの清々しさを最後にまた観せるのである。（青山）
