国が社会保障制度の改悪を急速に進めるなかで、住民の暮らしを守る運動の中心となる組織として結成され、幅広い団体・個人が加入しています。
総会に先立ち、庄内医療生協副理事長の岩本鉄矢氏が「日本の医療崩壊の現状と再建の展望」と題して講演しました。■医療崩壊の根本に構造改革
医療崩壊の根本に構造改革の具体化があるとして、構造改革路線について明らかにしました。
構造改革の本質は、「国家権力による国民・家計から大企業・大金持ちへの資産や財産の移転政策」であることです。
①金融機関や大企業救済のための超低金利政策は、定期預金金利でいえば１９９０年の６・０％から現在は０・05％となり、この10年間で家計から企業へ３００兆円以上も価値移転された。
②消費税率の引き上げで（１９９７年３％→５％）、年間の税増収５兆円が法人税率引き下げに使われた。
③高額所得者へは、最高税率の引き下げや株の売買、配当収入に対する税率引き下げで大幅な減税をした。
④社会保障の大幅削減では、
・年金支給年齢の引き上げと支給額の減額。
・医療保険料の値上げ、介護保険料の徴収。
・医療費窓口負担率の引き上げ、などです。
⑤派遣労働の全面解禁で大量の不安定雇用が発生し、賃金水準が大幅に引き下がった（上表を参考）。
■「医療構造改革」の具体化
医療分野での「構造改革」の具体化は、
第１に国民負担の拡大です。
①保険料の引き上げと滞納者から保険証を取り上げる。
②病院等の窓口負担率の引き上げ。
③入院食費が自己負担となるなど、保険が適用される範囲が縮小される。
第２に、医療機関の負担が拡大したこと。
①診療報酬は過去４回連続して引き下げ。 ②療養病床削減など既存病床の削減。
第３に、医療専門職員の育成が削減されたこと。
①大学医学部定員の削減では山大医学部でも１２０人から80人に削減。
②公立の医療専門職養成学校の縮減。
③私立学校への助成金の削減ーです。
■産科医院が半減
こうした医療構造改革が進められた結果、
①ここ数年で、全国でお産ができる施設が半減した。
②過去10年間で小児科医療の提供施設が２割減った。
③過去５年間で全国の救急病院が１割減った。
④病院から勤務医がいなくなる「立ち去り型サボタージュ」が横行している。ーなど医療崩壊が進んでいることです。
■後期高齢者医療制度
さらに来年４月から実施される後期高齢者医療制度は、
①保険料滞納者から保険証が取り上げされ、発足時から大量の無保険者が生まれる。
②保険料の年金天引きで収入低下となり受診抑制が拡大する。
③通院の多い高齢者だけの別立て保険は、そもそも保険原理から成り立たず、医療費抑制のために差別医療が固定化される。
④医療機関は収益が激減するなどです。
こうした後期高齢者医療制度の中止・撤回は国民の大きな声です。
参院選の結果から政治を変える「新しい時代」が見えてきました。
