庶民大増税(個人所得税・消費税)をやめさせるために

浦野広明・立正大学教授が講演
民報藤島2006年1月29日第529号

 山形県商工団体連合会(小竹輝弥会長)は21日、出羽庄内国際村で、庶民大増税(個人所得税・消費税)をやめさせるための学習会を開きました。

 講師は浦野広明・立正大学教授(税理士)です。

 浦野広明教授の講演の一部を紹介します(文責・編集部)。

☆  ☆  ☆

 近年の税制改定では2003年度に「配偶者特別控除の原則廃止」(04年分から)と消費税法の改定で@免税点の引き下げA簡易課税の上限引き下げB納付回数の増加B総額表示などが行われた。

 04年度改定では

@65歳以上の公的年金等控除の引き下げ(05年から最低額140万円から120万円に)

A05年から老年者控除の廃止

B05・06年度で定率減税の縮小廃止

などが決められた。

 06年度改定では

@所得税の税率構造の改定と個人住民税の税率が10%に一本化

A定率減税廃止(07年から)

Bたばこ税1本1円増税とビール風飲料増税

C無申告加算税(15%)を納付税額50万円超は20%に ー 等々

 この15年間を比較して国税収入は、大企業や高額所得者の減税を進め約20兆円も減る異常さだ。

 逆に低所得者に重い消費税は地方消費税も合わせて13兆円にもなっている。

 日本の消費税は国税収入に占める割合が世界的にもトップ水準だ。

 トヨタは1兆円もの純利益をあげながら、消費税は1円も納めず、逆に1964億円も還付を受けている。

 06年度の政府予算案では国債費が23%以上も占め、不公平税制を正さない限り財政再建はない。

 大企業にばかり目を向けている政治家を選ばないこと、国民負担増に反対する議員を議会に送ることだ。

国税収入の比較

@1990年度決算 A2005年度当初予算 比較Aー@
所得税 26兆円 13兆1640億円 ▲12兆8360億円
法人税 18兆4000億円 11兆5130億円 ▲ 6兆8870億円
小計 44兆4000億円 24兆6770億円 ▲19兆7230億円
消費税 5兆8000億円(3%) 10兆1640億円(4%)    4兆3640億円
合計 50兆2000億円 34兆8410億円 ▲15兆3590億円

2006年度政府予算案(一般会計)

歳 入 歳 出
税収
その他収入
公債収入
45兆8780億円
3兆8350億円
29兆9730億円
国債費
地方交付税等
一般歳出
18兆7616億円
14兆5584億円
46兆3660億円
合計 79兆6860億円 合計 79兆6860億円

1988年の所得税率

課税所得金額 税率% 課税所得金額 税率%
150万円以下
200 〃
300 〃
500 〃
600 〃
800 〃
10.5
12
16
20
25
30
1000万円以下
1200 〃
1500 〃
3000 〃
5000 〃
5000万円超
35
40
45
50
55
60

現在の所得税率(1999年改定)

課税所得金額 税率%
330万円以下
900万円以下
1800万円以下
1800万円超
10
20
30
37

2006年「税制改正」大綱の所得税率

課税所得金額 税率%
195万円以下
330万円以下
695万円以下
900万円以下
1800万円以下
1800万円超
 5
10
20
23
33
40

個人住民税の税率構造

課税所得金額 税率%
200万円以下
700万円以下
700万円超
 5
10
13

2006年「税制改正」大綱 一律 10%

税制改正による増収試算(不公平税制をただす会の2005年度試算)

不公平税制の是正・国税
税率を正す(法人税)
税率を正す(所得税)
(国税 計)
6兆8069億円
2兆8535億円
1兆0143億円
(10兆6747億円)
不公平税制の是正・地方税
法人住民税の税率改定
(地方税 計)
5兆1114億円
1兆2023億円
(6兆3137億円)
国税・地方税の増収 16兆9884億円
トヨタ自動車の消費税・地方消費税概算計算(2004年分)

・課税売上高 9兆2183億円(輸出5兆5634億円、国内3兆6549億円)
・課税仕入 7兆5820億円

・本来なら9兆2183億円×5%=4609億円から仕入7兆5820億円×5%=3791億円の差額818億円の消費税を納めるべきだが、

・輸出大企業の優遇のため、輸出売上には消費税率0%。
・輸出売上5兆5634億円×0%=0
・国内売上3兆6549億円×5%=1827億円

・1827億円ー課税仕入(7兆5820億円×5%=3791億円)=還付1964億円が入る。

 トヨタは1円も消費税を納めず、逆に1964億円ももらっている。

各国の税収に占める消費税

消費税の標準税率 日本 4% イギリス 17.5% イタリア 20.0% アメリカ 0%
国税収入比率 21.6% 21.5% 27.5% 0%
永長正士『日本の税制』(平成15年版)財経詳報社、2003年7月
 イギリスは生活必需品には課税せず、逆に医療費や公営住宅費はタダ。

 日本は総ての商品・サービスに課税し、国税収入に占める比率は高い。