追悼　太田榮市さんを悼む　鈴木重雄(八色木)

勸君金屈巵

故・太田榮市氏（藤岡）

滿酌不須辭

花發多風雨

人生足別離

君に勧める金屈巵（きんくっし）

満酌（まんしゃく）辞するを須（もち）いず

花発（ひら）けば風雨多く

人生別離足（おお）し

　中国の詩人　于 武陵（う ぶりょう）『勧酒（かんしゅ）』（五言絶句）である。

　私は今、貴方の在りし日を思い、人生の別れを惜しんでいる。

　貴方は、元藤島町長太田伝内家の鍬頭として農業に専念し、昭和30年４月、藤島農業改良普及所主催の馬耕競技会で、１等賞を受賞したほどの技術の持ち主であった。

　当時は、消防団や農協青年部などの組織活動に励み、やがて政治の道に志し、加藤康郎革新町政を誕生させた大功労者であった。

　藤島町議会議長として町政発展に努力され、「初志貫徹」の人であった。

　昭和37年（１９６２）から開始された農業構造改善事業で、自立経営農家の育成と生産性の向上をめざし、須走に畜産団地の造成や、藤岡にライスセンター建設を先駆的に取り組まれ、現在に至っている。

　農業の一線から退いた時は、いかにも残念であったようだが、金魚の飼育はずっとやっておられ、庄内でも重要な役割を果たしたと思う。

　高齢になって、老人クラブや東田川文化記念館郷土研究サークル会長など、文化活動にも大変ご苦労された。

　趣味の彫刻、篆刻(てんこく)は後世の宝であると確信している。

　友人ら３、４人で、野山をドライブで楽しんだ事は忘れられない。

　元気だった貴方が病魔におそわれ、５月29日の夜に、帰らぬ人となったことは悔やまれてならない。

　仏門に入り花咲き鳥笑う冥土の世界で、心安らかに過ごされることを祈念し、追悼の辞と致します。