ふるさと賛歌 ３　鈴木重雄(八色木)

日向三右衛門のこと

　豊栄村の豪農日向三右衛門は、八栄島村誕生まで大きな影響があったので、三右衛門家について述べてみたい。

　明智光秀に近い後裔の三左衛門と名乗っていたが、文政年間に三右衛門になった。これは藩主酒井左衛門尉を憚(はばか)って三右衛門になったようである。

　明治16年家督を継ぎ社会事業家として知られ、北海道士別市に日向農場を開墾し入植させた。現在士別市に日向温泉、日向スキー場、日向公園、日向神社、開拓記念碑がある。


碑文

　日向農場ハ明治三十五年山形県庄内ノ人貴族院議員日向三右衛門同衆議院議員斉藤良輔両氏ノ奔走ニヨリ誕生、日向氏農場主トナリ、同郷士久松栄作氏支配人トシテ奔走セリ、山形県庄内地方ヨリ三十数戸移住入植ス。当時ハ人跡未到ノ地ニシテ楡(ニレ)ヤチダモ等ノ大木天ヲ摩(マ)シ昼尚暗ク背丈ヲ没スル荊棘(イバラ)ウッ蒼(ソウ)タリ、入植ノ人々ハ日夜千辛(センシン)万苦(マンク)鋭意開拓ニ励ミタリ、土地肥沃ナルモ天塩川ノ氾濫毎年ノ如ク交通ハ道路モ不備渡船ヲ用イル等不便ニシテ危険、農産物物資ノ運搬等困難ヲ極メタリ、（ー以下略ー）

　久松栄作氏は添川出身である。

　豊栄出身の日向康吉氏（名誉市民）が、訪問調査してくれた。友好都市名寄市の隣である。

士別市多寄町日向森林公園 日向開拓記念碑

八栄島村の新村造成

　田川郡の中心地に位置し、交通の便も恵まれ、特に富裕な資産がある訳でもなかったのに、「新村造成願」が請願されたのであった。

　他町村にはこのような請願がなかったのに、当村にはその資料があったのは貴重である。

　「新村造成立之儀ニ付願」を要約すると、

　本県に於いては、来たる明治22年４月を期し、新制度施行のため、特に委員を設けて、新村造成等の取調べをしたところ、各村においてこれを許諾し、基礎まさに確定せんとす。

　基調査によれば、長沼、小中島、八色木、豊栄の４ヶ村連合を分割し、小中島を藤島村に、八色木村と豊栄村の２ヶ村を長沼村に連結して、各新村を造成せんと欲する計画なりき。是れ小中島と八色木、豊栄の３ヶ村民等服するにあたわざるによりて、謹んで知事閣下に請願するものである。