話しは前後してしまった。
１９４０年２月６日、朝、警察は俊太郎を、勤務校の山形市第八尋常小学校宿直室で、治安維持法違反容疑で検挙した。
同時に自宅をも家宅捜査し、彼に関係する書類などを押収した。同年の内務省警保局『社会運動の状況』文化運動の一節は、次のように記されてある。
「山形県当局に於いては、東北地方における生活主義教育運動の中心人物にして元教労事件関係者村山俊郎（ママ）一派の行動に付き鋭意視察内偵に務めたる結果、彼らの生活主義教育はプロレタリアリアリズムを基本方針とし、教労の極左的偏向と機械的公式論とを是正し、客観情勢に適合せる運動方針として採用せられたるものにして其の本質に於ては教労と何等異なる所無きこと…」と。
俊太郎を東北地方における生活主義教育運動の中心人物とし、俊太郎の検挙から、東北各県・北海道・東京などに検挙者が拡大し、百名以上にのぼった。
うち北海道は50人という大事件で、新聞は〝教育赤化の全貌〟などとし、共産党系の仕業のごとく一斉に報道した。
三浦綾子（１９２２：旭川～１９９９年）は、１９９４年この事件を作品化し、『銃口』を発行した。
俊太郎の検挙は、旧櫛引町泉流寺のエスぺランチスト斎藤秀一の検挙取調べ中に、東京の「生活学校」同人・黒滝成至との関係を把握したことが発端となった。（つづく）
