藤島中町 成澤功氏を悼む　鈴木重雄

在りし日の成澤功さん

君(きみ)に勧(すす)む金屈卮(きんくつし)

満酌(まんしゃく)辞(じ)するを須(もち)いず

花(はな)発(ひら)けば風雨(ふうう)多(おお)し

人生(じんせい)別離(べつり)足(た)る


君に勧めよう、この金の杯を。

杯になみなみと注がれた酒を遠慮する必要はない。

花が咲くと雨や風が多くなるように、

人生いつかは別れの日が来るのだ。


　この詩は中国の詩人于(う)武陵(ぶりよう)が詠んだ「勧酒」（さけをすすむ）の詩です。

　貴方とは東田川文化記念館歴史サークルの学友です。

　貴方は大川渡の豪農成澤家に生まれ、学問に優れた青年であったと聞いています。

　しかし終戦の農地解放により、奈落の苦しみを体験し生きてきました。

　文才の集まりである「らくがき倶楽部」の会員として時事評論、エッセーを発表し、読者を楽しませてくれました。

　私の拙書(せつしよ)「ふるさと賛歌」を発行した時、らくがき倶楽部から出版記念賞をいただいたことは生涯の思い出であり、篤く御礼を申し上げます。

　共に九十余年、喜怒哀楽を語った友が花びらの如く散って逝く淋しさを感じております。

　貴方は仲の良いおしどり夫婦でありました。

　そのつれあいを昨年亡くし、気落ちされたことを察します。

　幸い後継者に恵まれ、最愛の奥様と花咲き鳥笑う冥土で、安らかに過ごされることを祈念しております。

　令和３年３月17日