藤花荘　其五　　藤花荘(とうかそう)　其の五　　城貞（藤の花）

藤架繞荘北嶺南　　藤架(とうか)　荘(そう)を繞(めぐ)り北嶺(ほくれい)の南(みなみ)

老軀無奈忘人慙　　老軀(ろうく) 奈(いかん)ともする無(な)く人(ひと)を忘(わす)るるを慙(は)づ

莫粧相看未相識　　粧(しょう)　莫(な)く相(あい)　看(み)て未(いま)だ相(あい)　識(し)らず

日夜惰眠不得談 日夜(にちや)　惰眠(だみん)　談(かた)るを得(え)ず


名山鳥海山の南、庄内平野中央にあるふじの花荘、旧町花の藤の花の棚で取り囲まれている。

介護を受けている利用者は、年を取り体は弱り、人の名前や相手が誰かも忘れて、恥ずかしいことに今ではどうしようもないのだ。

顔かたちを飾ることもなく、お互い顔を合わせても見つめ合っているばかりだ。

何をするという事もなく話をすることもない。


藤花荘＝特別養護老人ホームふじの花荘。

藤架＝藤棚。

繞荘＝藤の花荘を取り囲む。

北嶺＝鳥海山。

老軀＝年を取り弱った体。

無奈＝どうしようもない。

忘人＝人の名や誰かを忘れる。

慙＝はじる。

莫粧＝化粧をしない。

相＝互いに。

識＝よく知る。

日夜＝昼も夜も。

惰眠＝特別何をするという事もなく過ごすこと。

談＝人と話す。