孫の家は私の祖父が早逝(そうせい)したので、ババ（祖母）が一家を切り盛りしていた。
小柄な体で、子どもの私には少し腰も曲がったように見えたが、丈夫であった。
台所の真ん中に囲炉裏があって、杉枝がこうこうと燃えている。
真ん中に飯鉢や汁膳を置き、両側に箱膳が並んでそれぞれ座る。
私はババと並んで箱膳がつく。箱膳は重箱を２つ重ねた位の高さで、蓋を裏返してお膳にする。
お膳の中から塩のきいた鮭の切り身を何食かに分けて食べた。
今日は山仕事の帰りに掘ってきた百合の球根のあんかけが出る。私は苦手であった。ほろ苦い味と香りが、平野地では食うことのない味であった。うまいから食べれとババがすすめる。
食べ終わると茶碗に湯をつぎ、大根漬けで茶碗をかき廻して洗う少し塩のきいた白湯(さゆ)がうまかった。（つづく）
（写真）昭和館
