【漢詩　農シリーズ】⑪　

農回顧　其十一　　農(のう)回顧(かいこ)　其の十一　　城貞（藤の花）

風和五月挿秧時　 風(かぜ)　和(わ)す五月(ごがつ)秧(なえ)を挿(さ)すの時(とき)

跬歩没跤塗若飴　 跬歩(きほ)跤(こう)を没(ぼつ)し塗(どろ)　飴(あめ)の若(ごと)し

跣痒行縢何看血　 跣(せん)　痒(かゆ)し行縢(こうとう)　何(なん)と血(ち)を看(み)る

蠑螈水蛭噏泥肌　 蠑螈(えいげん)　水蛭(すいちう)　泥(でい)　肌(ひ)を噏(す)う


五月になり、穏やかな風が吹き、稲の苗を植えている。

田植えで一歩一歩、足を泥に深く沈めると、泥が水あめにように、足にまとわりついてくる。

素足で田に入り足が痒くて見たら、脚絆がなんと血で染まっている。

イモリやヒルが、泥で汚れた肌に噛みついているではないか。


和＝やわらぐ。

挿＝さしこむ。

秧＝稲の苗。

跬歩＝ひとあし。

跤＝すね。

塗＝泥。

飴＝あめ。

跣＝はだし。

行縢＝きゃはん。

蠑螈＝イモリ。

水蛭＝ヒル。

噏＝吸う。