詠懐　其六　　詠懐(えいかい)　其の六　　城貞（藤の花）

人各有能有不能　 人(ひと)　各(おのおの)　能(のう)　有(あ)り不能(ふのう)　有(あ)り

閑人乏才訪親朋　 閑人(かんじん) 才(さい)に乏(とぼ)しく親朋(しんぽう)を訪(たず)ぬ

共知災異恒何定　 共(とも)に知(し)る災異(さいい)　何(なん)ぞ恒(つね)に定(さだ)まらん

万歳千秋恐有興　 万歳(ばんざい)　千秋(せんしゅう)　恐(おそ)れ興(おこ)る有(あ)り


人には誰にでも、得意と不得意があるものであるけれども、

何に用も無い暇な人（自分）には、別にこれと言った才能もないので、暇つぶしに、親しい知人を訪ねる。

みんな誰でも知っているだろう。大水、暴風雨、地震などの災難は、無常であるという事を。

台風十九号の被害等、恐ろしい事柄はこれからも永遠に起こるであろう。


詠懐＝物の思いをうたう。

各＝めいめい。

有＝持っている。

能＝できる。

不＝否定。

閑人＝暇な人。

乏＝足りない。

才＝能力。

親朋＝親しい友人。

災異＝天災地異。

恒＝いつでも。

定＝落ち着く。

万歳と千秋＝いずれも永遠のこと。

恐＝未来を恐れ、うたがい、気づかい、あやぶみ、思案する気持ち。

興＝生じる。