最江雑詠　　最江(さいこう) 雑詠(ざつえい)　　城貞（藤の花）

残秋霜落望荒涼　 残秋(ざんしゆう)　霜(しも)落(お)ちて望(ながめ)　荒涼(こうりよう)たり

津渡波騒濡衣装　 津渡(しんと)　波(なみ)騒(さわが)しく衣装(いしよう)を濡(ぬら)す

風勁客舟人半散　 風(かぜ)勁(つよ)くして客舟人(かくしゆうひと)　半(なかば)　散(さん)ず

最江激浪隠軽航　 最江(さいこう)の激浪(げきろう)　軽航(けいこう)を隠(かく)す


秋も残り少なくなり、降霜があって見渡す限りものさびしくなった。

渡し場は、波が荒々しく着物をぬらしてしまった。

また風も強くなり川くだりの乗客も非常にすくなくなり、

最上川の激しい波は小船が見え隠れさせるほどである。


雑詠＝題を決めずに物事を詠じた詩歌。

残秋＝残りの秋。

最江＝最上川。

津渡＝渡し場。

勁＝強い。

激浪＝はげしい波。

軽航＝小船。軽くて速い舟。