私の昭和 32

知覧特攻基地　鈴木重雄（88歳・八色木）

　何年か前、鹿児島県薩摩半島にある知覧特攻基地を見学し、知覧高等女学校なでしこ会編集「知覧特攻基地」を読んだ。

　昭和20年３月進級間近い女子学生は勤労動員学生として、各地から集結された特攻隊員の身の回りの世話をすることになった。

　三角兵舎の掃除、洗濯、食事、繕い物の雑用係として働いた。

　多くの隊員は到着して４～５日間を基地の三角兵舎で過ごし出撃されていたが、中にはたった一夜だけの滞在で出撃される兵士もいた。

　泣きながら桜の小枝を振って見送った光景がよみがえる。

　海軍兵学校で過酷な訓練を受けた学生が出撃前に三角兵舎で、筵の布団に丸太枕で夜を過ごすことを想像すると、まさに人間の扱いではないと感じました。

　生きて地獄、死んで極楽の境地ではと思うのです。

　三角兵舎は、松林の中に半地下式、木造バラック建てで屋根に大木が横倒しに偽装され、屋根だけ地面に置いたように建てられているので三角兵舎と呼ぶ。

　内部は、通路の両側が一段高い床であって、一夜の雨露をしのぐ粗末な造りで風通しも悪く、いつもじめじめしていた。

　藁布団に毛布の掛け布団、毛布の両側を布団の下にくるみ込んで寝袋のように作るベット式である。

　隊によってはシラミも湧いていたと言う。

　会場内には一人一人の遺書遺品が展示され涙なしには見学できません。