私の昭和 27

武神千歳さんのこと　鈴木重雄（88歳・八色木）

武神千歳・昭和61年9月・75歳

　千歳さんは私の家の近所、石川富太郎家の生まれである。

　子どもの頃医者ドと呼んでいた。

　明治初期まで漢方医であったが子供がいないので富太郎さんを養子にとり、その長女が千歳さんである。

　千歳さんは東京に出て、昭和19年11月東京大空襲で焼きだされ夫婦で八色木に疎開された。

　銀座で洋裁店をしていただけあって気品の優れた夫婦であった。

　千歳さんが生まれた頃は漢方医も廃業したので生活も苦しかった。

　小学校６年卒業すると藤島小学校長今田直己先生宅に子守り奉公し小学校高等科課程を学んだ。

　その後、父が山居倉庫サヤ掛け人夫として働いたので米背負いとして雇われたが、血を吐き３か月で止め、東京駒込看護会に入り派遣看護婦として勤務し、良縁あって、銀座で洋服生地卸屋をしている武神さんと結婚し、洋裁店２店舗を経営する。

　疎開先は隣三助さんの茶室(離れ座敷)に住み、藤島駅前に洋裁店を開き、多くの子女に洋裁を教えていた。

　武神さん家族はキリスト教に入信し、カウンセラー２級の有資格者である。

　平成４年(81歳)自叙伝「老馬道を知る、１信徒のあかし」を発刊している。「八栄島地区活動センター図書館にある」

　晩年(平成４年)、娘に連れられお墓参りの際、懇談することが出来た。

　雑誌のグラビア写真のモデルにもなったこともあるという聡明な美人であった。