一体で総理の座狙った

加藤元幹事長と佐藤秘書

民報藤島2002年1月27日第327号

金庫番と二人三脚

　加藤紘一・自民党元幹事長は、脱税容疑で国税当局の強制捜査をうけた「金庫番」の私設秘書と二人三脚で総理・総裁を目指してきました。

　自民党総裁の座を射止めるのに、カネの力に頼ったことでのつまづきが「秘書の脱税」という形で表に出た形です。

94年から事務所に入り

　加藤事務所代表を19日付で辞任した私設秘書の佐藤三郎氏（61）＝資材会社・コーショー社長・横浜市＝は、１９９４年から加藤事務所に入り、加藤氏の政治資金管理団体・社会計画研究会の会計責任者を兼ねました。

５億円台に膨らみ
７年間で31億円の巨額

　佐藤秘書が事務所入り以後、同研究会の政治資金収入は２億円そこそこから４億円、５億円台に膨らみました。（単位百万円以下切り捨て）
94年　２億９千万円
95年　３億７千万円
96年　５億４千万円
97年　４億７千万円
98年　４億２千万円
99年　５億５千万円
00年　４億６千万円

　94年から２０００年までの総額は31億円の巨額にのぼります。

「雲霓（うんげい）の会」

　政治資金の急増は、加藤氏が総理・総裁をめざし、政治力の拡大をはかる動きと連動していました。佐藤氏が加藤事務所にかかわるのと前後して、企業関係者をメンバーとする加藤氏の政策勉強会「雲霓（うんげい）の会」が発足（93年10月に第１回勉強会）、94年正月から機関誌『雲霓』を発行しました（季刊、社会計画研発行）。雲霓とは雲と虹のこと。

総理総裁への意欲

　創刊のことばでは「大日照りの時に雨雲や虹を待つように、庶民は偉大な指導者の出現を切望する意とされています」と解説し、「世紀の転換点に当たり、この時代の要請を政治家加藤紘一に付託すべく決意」と、総理総裁をめざす意欲を鮮明にしました。

　この間、加藤氏は99年８月の自民党総裁選に立候補、小渕恵三氏らと権力の座を争いました。同年、社会計画研究会の政治資金収入は過去最高額に増えました。

東北一円の規模で

　政治資金集めのパーティーの開催回数も96、97、98年各５回、99年７回、２０００年６回と増える傾向でした。昨年は12月10日に仙台市内のホテルで「加藤紘一君を激励する会」の名目で開催し、東北地方規模で企業にパーティー券をさばいて政治資金を集めました。

公共事業への期待つなぐ

　加藤氏は同パーティーで、「東北でこれから何をするのかといえば、従来通りの公共事業というのも重要です。それなりのかなりの仕事がありますから、ここをあまりゼロに考える必要はない。仙台を中心にインテリジェンス・コスモス構想というものがあります。東北全体で新しい産業立地をやりうるようにしないといけない」と語り、東北での公共事業拡大の期待をつなぐ、利益誘導的な発言をしていました。

　佐藤三郎秘書は、報道によれば東北地方一円の公共工事の紹介の見返りに口利き料を集める一方、政治資金の調達にも公共事業を利用していたとされます。

20数社の企業広告

　表向きの政治献金と別に有力な収入源と見られているのが、雲霓の会機関誌『雲霓』の広告料。今年１月発行の最新号が33号目。Ｂ５判の週刊誌大、１００頁ほどですが、毎号20数社の企業広告が掲載されています。

地元選挙区の企業も

　広告主企業で目立つのが鹿島、大成建設、ハザマ、三菱建設といった全国規模のスーパー・ゼネコンと並んで、加藤氏の選挙区・山形県内の地元建設企業です。佐藤工務、鶴岡建設（鶴岡市）、平尾工務店、みなと（酒田市）、十和建設（余目町）、松田組（南陽市）、羽陽建設（上山市）、升川建設（河北町）、和泉工務店（温海町）、山形建設（山形市）といった加藤系の公共工事関連16社が、毎号５社から10社ずつ広告を出しています。

広告料の名目で？

　政治資金収支報告によると『雲霓』発行による機関誌収入は、最近５年でみると８千万円から９千万円です。広告料は不明。広告料名目で別途収入を得ていた疑惑も指摘されています。

共和からのヤミ献金

　加藤元幹事長は、この件について、釈明のコメントをしたあと沈黙したままです。加藤氏にかんしては90年代はじめ、鉄骨メーカー共和からの１千万円ヤミ献金問題があいまいなまま、今日まで疑惑を引きずっています。

つまづきを重ね

　１年２ヶ月前の「加藤政局」でつまづいた加藤元幹事長は、今回の金権問題でつまづきを重ね、総理総裁どころか政治家としての資格そのものが問われます。

　ほぼ10年余り「ＹＫＫ」コンビといわれ、加藤氏と「政治的盟友関係」を結んできた小泉純一郎首相には、党総裁として加藤疑惑を解明する国民への責任が問われます。
　（日刊しんぶん赤旗１月21日付より）