箱田（はこた・添川)　　　青山崇

民報藤島2002年1月13日第325号

　箱田は添川集落の西鷺畑下（千原）からの街道筋にあります。意外なことに庄内ではここだけです。地元で納得できる話を聞くまでは、わけがあると思いながらも「箱のような田」という解釈から一歩も出られませんでした。石や砂利が多くて畦（くろ）づくりが大変、漏れない箱を作るようにていねいに畦ぬりをやる田だというのです。

　佐藤治助さんが『真壁仁素描』で書いています。鼠を見つけた真壁が「素手で鼠を鷲づかみにすると、ギューとねじり殺して、臓腑の飛び出した奴を、ぽんと田圃に放り投げた」「あいつは困った奴だ畦畔がこわされてしまう。やっと潅けた水が鼠穴からすっかり流れてしまうんだ。百姓にとっちゃ最も害敵だね」。

　農業をした人なら誰にでも分かる気持ちですね。

　地名グループの例会で、平形の本間豊治さんから重箱田（じゅうばこた）を聞きました長方形が普通なのに、何かの事情でできたほぼ正方形の田のことですが、数はあまりなかったそうです。「ヤロ重箱田見て来い」と言われたというのです。　平形では正方形の意味で重箱が使われていますが、重箱は漆塗りで漏れたりしない、しっかりした箱でもありました。添川では重箱的な意味で箱田と言ったのかもしれません。いずれにしろ、箱田は箱のような田などという軽い意味でない、重い思いが込められている地名のようです。（青山）